いつも多くの人々で賑わうリパブリック通りを抜け,石畳の細い路地を少し登ると、打って変わって静かな雰囲気に包まれた旧市街に出る。黄色やオレンジ色に塗られたバロック様式の街並みはとても美しく、他のコートダジュールの町や村とはずいぶん異なる雰囲気を醸し出している。イタリア国境に近いこともあり、フランスとイタリア双方の雰囲気が融合しているからなのだろうか。

夏はビーチリゾートとして、冬は避寒地として、多くの観光客が訪れるマントン。大きなハーバーにはたくさんのクルーザーやヨットが停泊している。フランス産レモンの約7割を生産するというマントンはレモンの町。町にはレモンを使った食材やお菓子のお店もたくさんあり、毎年2月頃に開催されるレモン祭りはこの町一番のイベントだ。

そしてこの町を象徴する芸術家がジャン・コクトー。海辺の要塞を利用して作られた要塞美術館と、新たにモダンなデザインで作られたコクトー美術館では、コクトーの多彩な芸術活動の痕跡に触れることができる。

旧市街のある丘の曲がりくねった急な坂道を登ってゆくと、古城の墓地に出る。不意に開けた視界からは地中海を一望する絶景が目の前に広がり、サンミッシェル教会の美しいシルエット越しに臨む地中海の景色は格別だ。そして、すぐ先はもうイタリアの海岸線。イタリア、モナコ、フランスと様々な文化が行き交う中で育まれてきた美しい港町マントン。ノスタルジックな美しさを感じることができる素敵な町だ。