山並みが、海へこぼれ出しそうなそうなリアス式の海岸線に、小さな漁村、カシはある。どこかの本で、フランス人が一番好きな海水浴場だと読んだことがあるが、その理由は行ってみるとすぐにわかった。

12月だと言うのに、風は穏やかで心地よく、太陽はさんさんと降り注ぎ、空と海はどこまでも青い。

カラフルに塗られた旧市街の家々は、急な坂道にひしめき合う様に並んでいて、窓からは洗濯物が干されていたり、下手くそな絵を描いたポストがドアの前に置かれていたり、何とものどかな雰囲気が漂っている。

そして、海に向かって急な坂道を下っていくと、ちいさなハーバーが姿を現す。真っ青な海、真っ白なヨット・・・

「気持ちいい～」　思わす叫んでしまった。

ハーバー沿いのおしゃれなレストランのテラス席に腰を下ろし、魚のスープとカシの白ワインを頼んだ。のんびりおしゃべりしながらランチを楽しんでいる人々。ゆらりゆらりと静かに佇むたくさんのヨット。海からの心地よい風、暖かな日差し。

 時間がゆっくり流れている。

ワインが体にしみてゆく。そして心にも。

 今はもうしばらく、この時間を楽しんでいることにしよう。